すぐわかる 相続・遺産分割トラブルQ&A

相続・遺産分割が必要となったとき、なにをどのように考えて判断すればよいのか。
100の家族があれば、100の異なる事情があります。さまざまな具体的な事例をもとに、どんなケースにおいても押さえておきたい「知識」を整理してみましょう。

父が10年前に亡くなりました。でも誰が名義を引き継ぐか、いまだに家族間で話し合いをしていません。いまからでも間に合うのでしょうか?
名義を誰が引き継ぐかを話し合う。これを遺産分割協議といいます。 この協議は、「いつまでに」という制約はありません。 いまのご家族のお気持ちに基づき、相続人間でお話し合いをされるのがよろしいでしょう。
父が亡くなりました。相続人は、私と兄の二人です。ところが、遺言には、兄1人に全ての遺産を相続させる、と書かれていました。弟である私には、なんの権利もないのでしょうか?
遺言がある場合には、法定相続分に優先して、遺言にしたがって分配されることになります。ただし、ご質問の場合であっても、あなたの遺留分を侵害することはできません。
上記で、弟である私の「遺留分」とはどういう意味でしょうか?
遺留分とは、被相続人の遺志にかかわらず、相続人間のバランスのために認められた制度です。
息子であるあなたには、相続財産の「4分の1」が遺留分として認められています。
具体的には、父親の相続財産が1000万円だったとすれば、遺言書の内容にかかわらず、あなたには、250万円の遺留分がある、ということになります。
上記の「遺留分」が認められているのなら、その分をいつ兄に請求してもかまわないのでしょうか?
「いつでも」というわけにはいきません。
遺留分は、「父親(被相続人)の死亡を知った時から1年以内」に請求しなければいけません。また、「死亡の事実」をかりに知らない場合であっても、「死亡」から10年で、権利を行使できなくなります。
兄が亡くなりましたが、遺言で財産のすべてをお寺に寄贈してしまっています。
弟である私は、「遺留分」を請求できるのでしょうか?
この場合、あなたは遺留分を請求することはできません。
「兄弟姉妹」の間には、遺留分が認められていないからです。
夫が亡くなりました。子どもがひとりおりますが、未成年です。
不動産は、私の名義としたいと思っています。
遺産分割協議書については、母親である私が子どもの親権者として代理で署名すればよいのでしょうか?
この場合、母親が子どもを代理することはできません。
かたちのうえで、お二人の利益が衝突する関係にあるからです。
したがって、家庭裁判所に申立てをして、特別代理人を選任してもらう必要があります。通常は、お子さんの祖父母、または叔父叔母などになってもらうことが多いようです。
上記の場合で、第三者の知人に特別代理人になってもらうことはできるのでしょうか?
特別代理人の資格に、とくに制限はありません。子どものために、真実、代理をする意志と能力があるかどうか、家庭裁判所が判断をすることになります。
未成年の子どもが二人おります。この場合、同じ人物が二人の特別代理人となってもかまわないのでしょうか?
二人のお子さんの特別代理人を、一人の特別代理人が「兼ねる」ことはできません。したがって、おひとりずつ、それぞれに選任してもらうことが必要となります。
父が亡くなり、相続人は、私たち兄弟3人です。長男である私は、父を10年間、介護療養のために面倒をみてきました。相続分は、やはり兄弟平等なのでしょうか?
なお、相続財産は、3000万円です。
共同相続人中に被相続人であるお父さんの財産の維持・増加につき特別の貢献をした人がいる場合、その程度に応じて、法定相続分よりも多額の相続財産の取得が認められることがあります。これを寄与分といいます。
上記の場合、具体的に、私の相続分は、どのように計算するのですか?
あなたの寄与分が、かりに600万円と認められた場合についてご説明します。
まず、3000万円から600万円を引いた、2400万円が、相続財産です。
そして次男と三男は、それぞれ2400万円の「3分の1」の、800万円もらうことになります。
したがって、長男であるあなたは、2400万円の「3分の1」の800万円と、寄与分600万円で、合計1400万円を相続することになります。
父が亡くなり、相続人は、長男である私と、ふたりの弟がいます。
父は生前、次男に、住宅資金として600万円を贈与しています。
この場合でも、法定相続分にしたがい、平等に相続することになるのでしょうか?
なお、相続財産は、3000万円です。
生前の贈与により、相続人間に不平等がある場合、贈与を受けた人を特別受益者と呼んでいます。民法では、この不公平を是正するため、特別な分割方法を定めています。
上記の場合、具体的に、私の相続分は、どのように計算するのですか?
遺産総額は、3000万ですね。まず、この額に、生前贈与された600万円をくわえます。合計の3600万円が、本当の遺産総額となります。 この場合、兄弟3人の相続分は、3600万円の「3分の1」で、それぞれ1200万円となります。これが、形式的な相続分です。
しかし、次男は、すでに600万円の特別受益額があるため、次男の相続分は、この1200万円から600万円を控除した残額の「600万円」となります。 長男であるあなたと三男には、特別受益額がないので、相続分は1200万円です。
10年前に、父親が亡くなりました。不動産の名義は父親のままになっています。とくに遺産分割の協議をすることもないまま、先日、母も亡くなってしまいました。
残された不動産は、兄である私名義にしたいと思います。母が亡くなった今になってから、そのような内容の遺産分割協議をすることは、できるのでしょうか?
可能です。ただし、遺産分割協議書の記載については工夫が必要ですので、詳しくは当事務所にご相談ください。
遺産分割の協議をしたいと思っておりますが、弟の行方が数年前から分かりません。どうすればよいのでしょうか?
行方不明者は、失踪宣告を家庭裁判所に請求することで、「死亡」とみなされることになります。
ご質問の場合、弟の生死が7年間分からない場合に、家庭裁判所にこの「宣告」を請求します。請求できるのは、弟の生死に「利害関係」のある者となります。
請求を受けた家庭裁判所は、一定の期間、「公告」をし、それでも行方が不明である場合に、失踪宣告をすることになります。
弟が行方不明になってから7年経過していない場合には、どうすればよいのでしょうか?
この場合、失踪宣告の請求ができません。
そこで、弟に代わり、弟のために遺産分割をする代理人を選ぶ必要があります。
この代理人を、不在者財産管理人と呼びます。選任は、相続人が家庭裁判所に申立てをします。
父親が亡くなりました。でも借金が多いので、相続をしたくありません。どうすればよいのですか?
相続放棄という手続を取ることになります。
家庭裁判所に申し立てて手続をとります。
ただし、申立て期間に制限があります。
「父親(被相続人)が死亡して自分が相続人となったことを知った時から3ヶ月以内」です。また、相続放棄をした場合、父親の「プラスの財産」も相続できないことに注意が必要です。
上記で、父親にカードローンなどの負債がかなりあるようです。でも、調べるのに時間がかかり、「死亡したことを知った時」から3ヶ月以内には確認できず、相続放棄をしたほうがよいかどうか、判断ができません。どうしたらよいのでしょうか?
その場合には、3ヶ月という期間の延長を、家庭裁判所に申立てることが可能です。早めに手続を取ることが必要でしょう。
父が亡くなったあと、遺産分割の協議がまだ整いません。ところが、父の預金通帳と印鑑を兄が管理しています。兄が預金を勝手に引き出すことはできるのでしょうか?
銀行での預金の引き出しは、本人確認が厳しくなっているので、親族とはいえ、難しいでしょう。しかし、キャッシュカードの暗証番号を知っていれば、ATMを使って引き出すことは簡単です。
この場合、銀行に対して、相続開始通知を出せば、その時点で預金は凍結されます。
上記の場合で、遺産分割協議が整う前に、葬儀費用などのために預金を引き出す必要が生じた場合には、どうすればよいのでしょうか?
凍結された銀行預金であっても、相続人全員の同意を確認することで、引き出すことはできるはずです。銀行に必要な手続を問い合わせてみるようにしてください。
私には他家に養子縁組した兄がおります。先日、私の父が亡くなりましたが、この兄にも、相続権があるのでしょうか?
他家に養子に入った兄にも、相続権があります。
実親との親子関係は、養子縁組によって消滅しません。
相続の権利も継続しています。
両親と養子縁組した兄がおります。私とは、「血のつながり」はありません。すでに両親は亡くなり、私も高齢で、妻子もおりません。私に万一のことがあった場合、兄が相続人となるのでしょうか?
ご両親と養子縁組をされた兄は、あなたと法律的に「兄弟関係」になっています。ご両親が亡くなられても、「養子縁組」がなくなったわけではなく、あなたとの「兄弟関係」も継続します。
したがって、ご両親や妻子がおられないあなたにとって、そのお兄さんが相続人ということになります。
素行の悪い息子には何も相続させたくありません。
「親子の縁を切る」ということは、できるのでしょうか?
現在のところ、そういう制度はありません。法律的な「親子関係」は、どうしても残ります。ただし、「縁を切る」ことはできなくても、似たような効果を得られる方法があります。
ひとつは、家庭裁判所に請求して、その息子の相続資格を失わせる、相続人廃除という方法です。
また、遺言を利用する、という方法もあります。ただし、息子の遺留分を侵害することはできません。
参考:日だまり青葉日記

さまざまな事例からも分かるように、相続をすることになり、遺産分割が必要になった場合、まず大切なのは、相続人同士がコミュニケーションを取り合うということ。そして、これと併せて、「法律的に正確な」知識に基づいた判断をしていくということもまた、大変に重要です。
みどりの杜司法書士事務所では、相続や遺産分割に伴う法律的・手続的なことがらについて、必要な場合には税理士とも連携をとり、随時、お話を承っております。
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